前日の夜半過ぎから吹き始めた風は、朝になっても止まなかった。
強風の中荷物をまとめ、前日同様ピッケルとアイゼンで歩き出す。

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スゴ乗越から間山へ

それにしても風が強い。ザックの板が船のマストみたいに風を受け
油断すると体ごと持っていかれそうだ。
ピッケルを抜いた瞬間や、アイゼンを蹴り込む前が特に緊張する。
そしてこの緊張は長く続く。

間山で休憩し、これから登り始める薬師を前にシェルを着込んだ。
まずは一番手前のピークを目指して黙々と歩く。
ピークを越えると更に先に次のピークが現れる。
そのピークにたどり着いても、更に先に更に高いピークが現れる。
そして次のピークに取り付くために、いつも少し下る。
薬師はこの繰り返し。
強風に叩かれながら、消えては現れる次の急登を黙々と処理する。

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間山から北薬師岳を望む

北薬師岳と幾つかの小ピークを越え、ようやく木の祠が現れた。
今度こそ最後のピーク、薬師岳の山頂だ。
それまでリードしてきたグリズリーが急に立ち止まって前を指す。
ピークはお前が先に踏め、という意味だろう。
祠の前に出ると長く続いた緊張と疲労がようやく解けた気がした。
目頭が熱くなった。

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薬師岳最後の登り

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山頂の薬師様

で、早速下る。斜面はガリガリに凍っているが、板を履いた。
ある程度滑ると雪はザラメに変わり、滑りやすくなる。
広い尾根へ自由にシュプールを刻む。御山谷以来の滑降であり
長い緊張から解放された直後なので、余計に気持ち良く感じた。

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薬師岳南尾根

薬師峠から再びシールを付けて太郎平へ。
太郎平小屋は今回のルート上唯一営業している山小屋だ。
テントを張って早速ビールで一息ついた。幸せな晩だった。


コースタイム
 0640:スゴ乗越
 0800:間山
 1100:北薬師岳
 1240:薬師岳
 1400:薬師峠
 1500:太郎平

メンバー
 グリズリー、ブナ(記)