今年のゴールデン・ウィークは中盤で天気が崩れるらしい。
当初から五日目の天気が気がかりだった。
出発前に確認した時とスゴ乗越で最後に確認した時とでは
天気の崩れ始めが若干早くなって、夜も冷え込むらしい。
ただしそれ以降は携帯も圏外で予報を確認できていない。
最後の予報を頼りにすると、飛騨沢の滑降は雨の中だ。
天気の崩れが早まる傾向にあることを考えると、登りで雨
更に気温が下がると滑降前の飛騨沢への積雪も考えられる。
新雪の飛騨沢を滑っては下りられないので、槍を諦め
双六小屋から小池新道経由で新穂に抜ける方が安全だろう。
そう考えて、五日目は槍を諦めて下山すべきではないかと
四日目の夜、残り少なくなったウィスキーを舐めながら
グリズリーに相談してみた。グリズリーは黙って聴きながら
大丈夫だと思うけどなぁ、と繰り返しながらも最後には
ブナに任せた、となって二人とも寝袋に潜った。
明けて翌日、いよいよ出発。双六小屋周辺には雪がない。
どうせすぐ履くんだからと、ザックを背負って板を手に持ち
さあ行きましょうかとグリズリーを振り返ると、何か変だ。
板をザックに固定して、アイゼンを履いてる人がいる。。
うん、と言いながら槍ヶ岳の方向を向いているし。。
え?ここから滑って下りるんじゃなかったでしたっけ?
うん、どっちでも良いよ。板を背負ってアイゼン履いて、
間違いなくどっちでも良い人の格好ではない。
やれやれ。確かにここで下りるのは残念な気もする。
天気が崩れればいろいろ辛いだろうが、
辛いだけなら耐えれば済む話だ。
観念して板をザックにくくりつけ、槍ヶ岳を目指す。
グリズリーの見立て通り、樅沢岳へのアプローチと
自分にとっての最後の難関である西鎌尾根に雪は少なく
ほとんど夏道を使って突破できた。
で、千丈沢乗越。ここからは飛騨沢が一望できる。
ただし時間は予定より少し遅い。ここから滑ろうか?
時間を気にしたグリズリーがそう訊くも、
せっかく西鎌尾根を越えてここまで来たところだ。
正面の絶壁が恐ろしげだが、一度行くと決めたんだ。
最後まで行きませんか?で、これが後悔の元。。
時間が差し迫る中、行くと決めた後のグリズリーは速い。
一方自分はピッケルとアイゼンでの登攀でいつも遅れる。
グリズリーよりも軽いはずの自分が何故か雪に沈むからだ。
そして足が雪に沈むとバランスを崩してトレースを壊す。
このトレースを通る後の人とかかっている時間を考えると
苦手な岩を行った方が得策かもしれない。
そう思って岩場を登り、相当遅れをとって肩の小屋に到着。
そこから間髪入れずに飛騨沢を滑る。飛騨沢は広く、長い。
滑り降りると五日分の苦労があれこれと脳裏をよぎる。
肩の小屋で立ち込めていたガスも、下りると雨になった。
槍平小屋で小休止。ちょっと手前で熊に出会った。
沢の反対側で一心不乱に何か食べるものを探していた。
槍平小屋までくれば後は簡単、なはずだった。
夏道を探して歩き始めても、それが全然見当たらない。
どうも雪の重みで薮が潰され、夏道が薮に消されたようだ。
進むにつれて植生が濃くなると地面の積雪も少なくなる。
薄雪を踏み抜くと薮に足を取られ、簡単には抜け出せない。
かといって薮の上のスキー・ブーツはとにかくよく滑る。
沢伝いに歩いても、雨で水かさが増した瀬は
巻かないと越えられない。巻けば結局また薮に戻される。
そこへきて板はザックだ。
薮を漕げば足どころか、板のヘッドもテールも引っかかる。
ヘッデンを出して歩く覚悟を決めたものの、
そうまでしたところで今日中の下山は無理だろう。
日がくれた時点で薮の上に無理矢理テント張って
一夜をやり過ごすことにした。
コースタイム
0640:双六小屋
0730:樅沢岳
1200:千丈沢乗越
1430:槍ヶ岳山荘
1640:槍平小屋
1830:飛騨沢ブドウ谷付近
メンバー
グリズリー、ブナ(記)
当初から五日目の天気が気がかりだった。
出発前に確認した時とスゴ乗越で最後に確認した時とでは
天気の崩れ始めが若干早くなって、夜も冷え込むらしい。
ただしそれ以降は携帯も圏外で予報を確認できていない。
最後の予報を頼りにすると、飛騨沢の滑降は雨の中だ。
天気の崩れが早まる傾向にあることを考えると、登りで雨
更に気温が下がると滑降前の飛騨沢への積雪も考えられる。
新雪の飛騨沢を滑っては下りられないので、槍を諦め
双六小屋から小池新道経由で新穂に抜ける方が安全だろう。
そう考えて、五日目は槍を諦めて下山すべきではないかと
四日目の夜、残り少なくなったウィスキーを舐めながら
グリズリーに相談してみた。グリズリーは黙って聴きながら
大丈夫だと思うけどなぁ、と繰り返しながらも最後には
ブナに任せた、となって二人とも寝袋に潜った。
明けて翌日、いよいよ出発。双六小屋周辺には雪がない。
どうせすぐ履くんだからと、ザックを背負って板を手に持ち
さあ行きましょうかとグリズリーを振り返ると、何か変だ。
板をザックに固定して、アイゼンを履いてる人がいる。。
うん、と言いながら槍ヶ岳の方向を向いているし。。
え?ここから滑って下りるんじゃなかったでしたっけ?
うん、どっちでも良いよ。板を背負ってアイゼン履いて、
間違いなくどっちでも良い人の格好ではない。
やれやれ。確かにここで下りるのは残念な気もする。
天気が崩れればいろいろ辛いだろうが、
辛いだけなら耐えれば済む話だ。
観念して板をザックにくくりつけ、槍ヶ岳を目指す。
西鎌尾根からの槍ヶ岳
グリズリーの見立て通り、樅沢岳へのアプローチと
自分にとっての最後の難関である西鎌尾根に雪は少なく
ほとんど夏道を使って突破できた。
で、千丈沢乗越。ここからは飛騨沢が一望できる。
ただし時間は予定より少し遅い。ここから滑ろうか?
時間を気にしたグリズリーがそう訊くも、
せっかく西鎌尾根を越えてここまで来たところだ。
正面の絶壁が恐ろしげだが、一度行くと決めたんだ。
最後まで行きませんか?で、これが後悔の元。。
時間が差し迫る中、行くと決めた後のグリズリーは速い。
一方自分はピッケルとアイゼンでの登攀でいつも遅れる。
グリズリーよりも軽いはずの自分が何故か雪に沈むからだ。
そして足が雪に沈むとバランスを崩してトレースを壊す。
このトレースを通る後の人とかかっている時間を考えると
苦手な岩を行った方が得策かもしれない。
そう思って岩場を登り、相当遅れをとって肩の小屋に到着。
槍ヶ岳からの西鎌尾根
槍ヶ岳山荘
そこから間髪入れずに飛騨沢を滑る。飛騨沢は広く、長い。
滑り降りると五日分の苦労があれこれと脳裏をよぎる。
肩の小屋で立ち込めていたガスも、下りると雨になった。
飛騨沢へのドロップ・イン
槍平小屋で小休止。ちょっと手前で熊に出会った。
沢の反対側で一心不乱に何か食べるものを探していた。
槍平小屋までくれば後は簡単、なはずだった。
夏道を探して歩き始めても、それが全然見当たらない。
どうも雪の重みで薮が潰され、夏道が薮に消されたようだ。
進むにつれて植生が濃くなると地面の積雪も少なくなる。
薄雪を踏み抜くと薮に足を取られ、簡単には抜け出せない。
かといって薮の上のスキー・ブーツはとにかくよく滑る。
沢伝いに歩いても、雨で水かさが増した瀬は
巻かないと越えられない。巻けば結局また薮に戻される。
そこへきて板はザックだ。
薮を漕げば足どころか、板のヘッドもテールも引っかかる。
ヘッデンを出して歩く覚悟を決めたものの、
そうまでしたところで今日中の下山は無理だろう。
日がくれた時点で薮の上に無理矢理テント張って
一夜をやり過ごすことにした。
コースタイム
0640:双六小屋
0730:樅沢岳
1200:千丈沢乗越
1430:槍ヶ岳山荘
1640:槍平小屋
1830:飛騨沢ブドウ谷付近
メンバー
グリズリー、ブナ(記)
コメント